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意外と知られていない、発達障害と『感覚』のこと

『感覚』と子どもの発達

発達障害について考える際は、『感覚』という概念をふまえることがとても大切です。
ただし、ここでいう『感覚』とは、目や耳、舌、肌といった人間の感覚器を通して外部の刺激を受け、それを脳が感じることを指します。

自閉症スペクトラム障害に関しては、感覚過敏や感覚鈍麻といった感覚異常が大きい特徴の1つとして挙げられます。
実際に、「PARS-TR(Parent-interview ASD Rating Scale)」という自閉症スペクトラム障害の評定尺度には、この『感覚』についての質問項目が多く含まれていることからも、これらが深く関係しているとお分かりいただけるかもしれません。

さて、この『感覚』についてですが、幼い子どもたちは、遊びや日常生活を通して、日々さまざまな感覚を受容しています。
さまざまなものを見て、いろいろな音を聴き、鼻で嗅ぎ、舌で味わい、そして肌で感じています。
これらの視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚は『五感』といわれるもので、人間の感覚として基本的なものだといえるでしょう。

そして、上に書いたように、自閉症スペクトラム障害の子どもたちは、生まれつきそのような感覚に過敏があったり、逆に鈍かったりします。
聴覚の過敏があれば、通常であれば耐えられるレベルの音(電車や花火の音、トイレのエアータオルの音など)に過剰に反応し、思わず両手で耳をふさいでしまうかもしれません。
味覚に過敏があれば、特定の食べ物を極端に避けることが、偏食として表われるかもしれません。
あるいは、口中に触覚の過敏があれば、特定の触感の食べ物を嫌がり、やはり偏食傾向がみられるかもしれません。

自閉症スペクトラム障害のお子さんに関しては、その他にもさまざまな感覚障害がある場合があります。
比較的多くみられるのは、手の過敏と足の裏の過敏です。
手の過敏については、手を触られることを嫌がったり、物を長時間持たない(すぐに手放す)ことでわかったりします。
そしてそのことが、物の操作による認知面の発達の遅れや、微細運動の発達の遅れにつながることがあります。
また、足の裏の過敏がある場合は、そもそも床に足をつけることを嫌がる場合が多く、歩き初めが通常より遅くなることで、周囲に気づかれたりします。
ただし、独歩獲得の遅れについては、必ずしも足底の感覚過敏が原因とはいえませんので(その他にも筋力不足やマヒなどあらゆる原因が考えられます)、安易に決めつけるべきではないでしょう。

ところで、リハビリテーションの世界には、『感覚統合』という考え方があります。
そしてこの考え方では、上記の視覚、聴覚、触覚に、『前庭覚』と『固有受容覚』という感覚が加えられます。
これらはあまり聞いたことがない『感覚』かもしれません。

『前庭覚』とは、簡単にいうと、“自分が動いたり移動したことをつかむ感覚”だといえます。
たとえば、立っているところで、不意に誰かから強く押され、倒れるとします。
その時、人は倒れながら、地面と直角だった自分の身体が傾いていることや、自分の頭が地面に近づいていることを感じます。
あるいは、ブランコやジェットコースターに乗っていて、目をつぶっても自分が高速で移動していること、揺れていることを感じます。
この感じているものが、『前庭覚』の刺激といわれるものです。

一方の、『固有受容覚』も耳慣れない言葉です。
こちらは、簡単にいうと、筋肉や関節といった“自分の身体の動きや力の入れ具合をつかむ感覚”だといえます。
この『固有受容覚』の刺激は、私たちが日常生活において当たり前に受容しているもので、意識しづらいものです。
固有受容覚に問題があると、たとえば荷物の重さとそれを持ちあげるのに必要な筋力がつかめず、軽い荷物を持ち上げるのにものすごい力を入れるかもしれません。
あるいは、目的の動作をするための、自分の手足の動きがつかめず、周囲から見て不器用でぎこちない動きをしているように見えたりします。

冒頭で述べた五感や、前庭覚、固有受容覚といったものは、人間に生まれつき備わっているもので、生まれて、周囲からいろいろな刺激を受け、遊ぶといった、子どもなりの生活をしていく中で、自然に発達していくものです。

しかし、育っていく過程で刺激の入力に過不足があると、各感覚に偏りが生じたり、生活に支障が出る状態のまま学校生活を営む年齢となったりします。

長い時間、座った姿勢を保つことが難しかったり、視界に入るものに過敏に反応したり(集中できない)、転んだ時にパッと手をつくことができなかったり、などという現代の子どもに多いといわれる症状の背景には、この感覚の偏りがあるかもしれません。

感覚の過不足ない入力は、発達の過程において重要なことであり、とりわけ低年齢のお子さんにとって大切です。
なぜなら、感覚の発達と『脳の可塑性』は、深く関係しているからです(詳しくは『早期発見・早期介入の大切さと脳の可塑性』をご覧ください)。
そのため、Apilaでは、低年齢のお子さん(新版K式の適応年齢)には、この『感覚』を評価する検査を必ず行います。
そしてその結果にもとづいて、日常生活においてどのような刺激入力を意識していけばよいのか、どのような遊びを取り入れていけばよいのかを、客観的にお伝えいたします。

 
 

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