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『スペクトラム(連続体)』の理解

 

「スペクトラム」という考え方とさまざまな障害

「スペクトラム(spectrum)」とは、『連続体』あるいは『範囲』と訳される言葉で、光学や物理学で使われます。
そして同時に、この言葉は、発達障害周辺の領域とも深く関係しています。

『自閉症スペクトラム障害(ASD)とは』で述べたように、世界中で広く使われている『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』というものがあります。
日本語版が刊行されたのは2014年ですので、これが最新ですね。
なお、DSM-5は、その名称が示すように、精神疾患の診断や分類のための手引書であり、世界基準のものです。

『DSM-5』の1つ前のバージョンである、『DSM-Ⅳ-TR』では、自閉症スペクトラム障害という分類はありませんでした。
いわゆる自閉症や、アスペルガー障害、高機能自閉症などはすべて、『広汎性発達障害』というカテゴリーに含められ、
厳密には別のものとして分類されてきました。
しかし、広汎性発達障害に含まれる障害、特に上記の3つについては、根本にある特徴が同じであり、人によって程度がさまざまであると多くの人が感じていました。
自閉症を「スペクトラム」として捉える考え方はDSM-5以前からあったのです。
そしてその流れをくむ形で、DSM-5ではそれらがすべて「自閉症スペクトラム障害:Autism Spectrum Disorder(ASD)」として統合されたわけです。

それでは、自閉症スペクトラム障害を例に、「スペクトラム」とはどういうことなのかを下の図に示したいと思います。

上の図では、「健常」から「強い自閉傾向」までが地続きになっていて、矢印の上に区切りがありません。
ここからここまでが「軽度」であるとか、ここから先は「重度」といったような線引きがなく、同一線上で連続体になっています。

ここでポイントとなるのが、スペクトラム線上に「健常」が含まれていることです。
自閉症スペクトラム障害にみられるような特徴は、実は程度の差こそあれすべての人が持っている。

これが「自閉症スペクトラム障害」の捉え方です。

白なのか、黒なのか、0か、1か、障害があるのか、ないのか、という捉え方ではなく、程度の差、つまり濃淡だということですね。
これはもう、背が高いのか低いのか、勉強ができるのかできないのか、力が強いのか弱いのか、自閉傾向が強いのか弱いのか、というように、その人を構成する要素の1つにすぎない、といえるかもしれません。
そして、この捉え方をふまえると、日常でよくあるような、「あの人は発達障害だ」「いや、そうではないよ」などという議論は、厳密には成立しないことになります。
正しくは、「あの人は発達障害の傾向が強いね」「いやそんなに強くはないんじゃないか」となるわけですね。

その他の発達障害、ADHDや学習障害についても、もちろんお子さんによって傾向の強さに差があります。
もしかすると、どのような障害においても、このスペクトラム(連続体)としての捉え方が、適切なのかもしれません。
現に、DSM-5では、「統合失調症スペクトラム障害」という、これまでにない概念が提唱され、世界的に精神障害の捉え方が変わってきているとわかります。
さまざまなパーソナリティー障害に関しても、同じことがいえるでしょうし、今後ますますこの捉え方が増えていくでしょう。

私はこの考え方が好きです。
白か黒か、0か1かではなく、その傾向は健常(とされる)人まで含めてみんなにあり、程度の差でしかない。
この考え方がどのような精神障害にも適用されて、不必要な区別や、差別につながるような境界線がなくなればいいと思っています。