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発達障害とは何か

目次

1.発達障害の現状
2.発達障害とは何か
3.発達障害はとても広い概念
4.発達障害の原因

1.発達障害の現状

『発達障害』という言葉をよく見聞きするようになりました。
メディアなどでもしばしば取り上げられていますので、ご存知の方は多いでしょう。
しかし、発達障害がさまざまな取り上げられ方をするなかで、言葉だけが独り歩きしてしまっている感が否めません。

たとえば、自閉症スペクトラム障害(ASD)に含まれるアスペルガー障害をもとに、その場の空気が読めない人を「アスペ」と呼んで揶揄することがあります。
あるいは、ASDの特徴を持つ人を、「ADHD」(注意欠陥・多動性障害の略称)と呼び、両者を混同していると思われる場面があったりもします。

メディアがセンセーショナルな部分だけをクローズアップするなど、多くの人が興味を持つような取り上げられ方を通して、それを見聞きした人々が好きなように解釈し、それが言葉の独り歩きにつながっているようです。
発達障害という概念が広く周知されることによって、多くの人々が問題意識を持つことは大切ですが、その一方で、正しい理解も同じかそれ以上に大切です。

それでは、発達障害とは、そもそもどのようなことを指す概念なのでしょうか。

2.発達障害とは何か

精神疾患の診断の根拠となる手引書として、『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』というものがあり、世界中で広く用いられています。
そのDSM-5によると、発達障害(ただしDSM-5では『神経発達障害群』とされています)とは、

発達早期、しばしば小中学校入学前に明らかとなり、
個人的、社会的、学業、または職業における
機能の障害を引き起こす発達の欠陥により特徴づけられる。

とあります。ちょっとわかりにくいですね。
発達障害とは、つまり、

『就学前に明らかとなり、生活において不都合を生じさせる障害』

ということができそうです。そして、通常は外見から障害の有無がわかりません。

ただ、発達の早い段階、多くは就学前に明らかになるということは、主に子どもの障害なんですね。

しかし一方で、最近では『大人の発達障害』なんていう言葉もトピックとして取り上げられるようになり、子どもの障害とばかりはいっていられない状況になっています。
実際に、後で述べるようなさまざまな発達障害の特徴が、大人の方にみられる場合が少なくありません。

具体的には、青年期以降の大人と発達障害との関連でいうと、ひきこもりや、就業後の職場不適応などがしばしば話題となります。

つまり私たちは、発達障害という概念を、子どもに限定せず、大人まで含めた、長い視点でみていく必要があるのです。

3.発達障害はとても広い概念

発達障害はとても広い概念で、その中にはさまざまな障害が含まれます。
上で述べたような、自閉症スペクトラム障害や、ADHD、アスペルガー障害はもちろん、
他にも学習障害(LD)や知的障害(MR)、発達性運動協調障害(DCD)など、細かく分類すると、多くのものがあるのです。
発達障害とは、それらをまとめた呼び方となるわけですね。

上に示した図は、発達障害をおおまかに分類したものです。
自閉症スペクトラム障害(ASD)、注意欠陥・多動性障害(ADHD)、
学習障害(LD)、協調運動障害(DCD)とあり、
ぞれぞれが重なる部分があります。
この重なっている部分がポイントとなるわけですね。
また、中央には知的障害(MR)があり、
これもそれぞれと重なる部分があります。
実は、この重なっている部分は、発達障害の性質をよく表しています。
つまり、発達障害は、その特徴からいくつかに分類されていますが、
1人のお子さんが複数の特徴を持っていることが少なくないのです。
また、知的に遅れがある、あるいはない場合があり、
これもお子さんによってさまざまです。

4.発達障害の原因

発達障害に含まれる、それぞれの障害の原因については、これまでにさまざまな議論がなされてきました。

環境(親の育て方など)に原因があるとされる考え方にはじまり、その後は遺伝的な原因のみを議論する流れが主となっていましたが、現在は環境因についても再び注目されはじめています。

しかし残念ながら、いまだに「これだ」という原因は特定されていません。
複数の原因が重なっていると考えられています。

ただ、親子や兄弟で同じ発達障害が生じることが多いため、おそらく、遺伝的な原因は少なからずあると思われます。

また、私個人が多くのお子さんにかかわってきた経験をふまえると、やはり原因に先天的な部分(生まれつきのもの)は大きいように思います。
つまり発達障害は、“治る”種類のものではないということですね。
そして問題は、発達障害の特性について、親御さんを含めた周囲の方の理解がないと、お子さんの自己効力感を低下させ、そのことが二次的な障害(抑うつなど)につながる場合があるということです。

しかし、この“治る”ものではない、という事実を不必要に大きくとらえ、先行きに不安を感じすぎることや、悲観しすぎることは、違うと思います。
根本的な治療ができない一方で、早い段階で気づいて対処・訓練することで、二次的な障害を防げる場合があるからです。
発達障害に対して、『早期発見・早期介入が大切』なんていわれるのは、このことをいっているわけですね(詳しくは、早期発見・早期介入と脳の可塑性についてをご参照ください)。

 

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